公害の理不尽な痛み。映画 MINAMATA
2021.10.20

公害の理不尽な痛み。映画 MINAMATA

皆様こんにちは。
ROBROY designing outdoors
秋元悠佑です。

映画「MINAMATA」(アンドリュー・レヴィタス監督)をTOHOシネマズ甲府にて、鑑賞して来ました。
思わず自分史と重ね合わせて、少年時代の自分の事を思い出しました。

※水俣病を取材したアメリカ人写真家ユージン・スミスを主人公とした、言わば”ムービージャーナリズム”。

良かった点。

○ 水俣病

今作のテーマは、タイトル通りの水俣病。
言わずと知れたこの公害の公式認定はなんと1956年で、もう70年近く前の話。今作を観たことで、思わずウィキペディアで水俣病を調べてしまうほどには、興味を持ってしまいました。
小学校の時以来となる、プチ「水俣病研究」を今回行ったわけですが、子どもの時には理解出来なかった複合的な問題も理解出来て、これが非常に意義深い。
公式認定が1956年だというだけで、実際の「被害」は1942年頃には、見られ始めるという。。
一番衝撃的だったのは、因果関係がはっきりと証明されるまで、(それにはとても時間がかかる)工業排水の排出は止められなかった、という点。
有機水銀説が怪しくても、それを証明するだけの科学的技術がなければ、(根拠を示さなければ)直接の原因である工業排水の排出は止められなかったため、被害は拡大し続けたとの事。
立証責任は、被害者の方が負わなければならないのか。
なんという不条理!そして二次災害、風評被害と続き、公害のダメージの裾野の広さを思い知りました。

なんてことだ。戦争と同じレベルで、公害とは、人間の愚かさの究極なのだな。。

私がまさにそうなのだけど、こうして関心を持つ人がいるだけで、この映画の社会的意義があったし、この時代に作られて、本当に良かった作品だと思います。

○ キャスト

主人公ユージン・スミスは、あのジョニー・デップですよ。私の世代的には「パイレーツ」シリーズで大スターだったあのジョニー・デップ。今作では、演じるのが上手いという事なのか、全くジョニー・デップに見えません。あれ、ジョニー・デップっていつからこういう感じ?(笑)
奥様アイリーンを演じた美波、原告団代表を演じた真田広之も相変わらず良かったですが、個人的に驚いたのが、チッソ社長役を演じた國村隼の英語力。こんなに発音良く滑らかな英語の長文セリフを話せることに驚き。日々練習しているんだろうな。少しは見習わないと。
國村隼って、最近どの作品観ても出てる。改めてすごい役者だわ。顔面力が素晴らしい。大好きです。

個人的感想。

社会的意義もありドキュメンタリーフィルムとして価値ある作品なのは間違いないのだけど、純粋な映画として面白いか、感動するか、と問われると正直微妙だなぁ。
いい映画だけど、ところどころに違和感がある作品。
まず観た人多くが指摘するところだろうけど、水俣が水俣に見えない点。
オチを言うと、これ、ロケ地がセルビアなんだそうです。日本で撮ってない。
そりゃ、いろいろな事情があるんだろうけど。これによって、リアリティが。。
うーん、まずはここでつまづく。

次に、ストーリーがスイングしない点。フィクションなのだから、もっとストーリーを創作しても良いのだろうけど、特に盛り上がるところもなく淡々と過ぎていく感じ。ユージン・スミスとアイリーンのラブストーリーも弱めだし、写真のくだりもエピソード弱め。
楽しむ点がどこなのかわからず、映画の出来としては、個人的には刺さりませんでした。詰まるところ、写真家が1枚の写真によって、世界に訴えかけるというストーリーなはずなんだけど。(作品名は「入浴する智子と母」)いい映画だけど、面白くはないんだよな。

そして、史実を伝える社会的意義はあると言いつつも、水俣病に関心が無いと、この映画を見ることはないと思うし。(つまり、そもそも問題意識のない人には届かない)
地元住民からの意見、心象をどこまで取り入れるべきか?(それに伴う作品の質も含めて)どこまで気にするべきなのか?という作り手サイドの難しい問題のことを想像しました。

個人的な小学校時代の思い出として、水俣病は小4の時に社会の時間で取り上げたはず。
珍しく興味関心を持ち、通信簿にもその旨、書いてもらったっけ。水俣の資料館か何かに、電話インタビューしたっけな。
当時何を思ったか、水俣病を調べるうちに、「ジャーナリスト」になりたいという夢を持った事を思い出しました。そうだ、小学生の頃、私はジャーナリストになりたかったんだ。(笑)
回り回って、アウトドアガイドになりましたけど、この映画を観て、そんな事を思い出した次第。
映画としては正直全然面白くなかったですが、名前も知らなかったユージン・スミスの事も知れたし、自分のルーツの一端に触れることも出来たし、映画体験としては、出会えて良かった作品だと思います。

いい映画なので、多くの人に観てもらいたい。
私には刺さりませんでしたけど、すごく感動するって人もいると思う。

それにしても、公害は悲惨。戦争と一緒。これは、教育の現場で、言い続けないとダメな点だな。
子どもと触れ合う立場の人間として、心に留めておきたいと思います。

ありがとうございました。

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