TOO MUCH PAIN.  映画 猿楽町で会いましょう
2021.06.20

TOO MUCH PAIN. 映画 猿楽町で会いましょう

皆様こんにちは。
ROBROY designing outdoors
秋元悠佑です。

前評判の高さが伝わって来ていた、映画「猿楽町で会いましょう」(小山隆監督)をシネマサンシャイン沼津にて鑑賞して来ました。

「花束みたいな恋をした」、「街の上で」に連なる、2021青春傑作3部作、堂々の、ここに完結。

渋谷区猿楽町に暮らす駆け出しフォトグラファー(金子大地)と、地方から上京してきた駆け出しモデル(石川瑠華)の恋愛模様を中心に、青春期の「痛み」を描いた群像劇。

良かった点。

○ 小山隆監督、衝撃のデビュー作

今作がデビュー作となる、小山隆監督。
残酷なまでに才能の世界である、映画監督。また新たな才能と言って良いのではないでしょうか。
脚本とか、画作りとか、登場人物の整理整頓とかがよく出来ているから、上映時間121分あっという間に感じました。
インタビューを読むとCM上がりの方みたいで、日本のリドリー・スコットとなるか。映画ファンはこの名前、覚えておかなければいけませんね。

○ 主演 石川瑠華

役者陣、金子大地も、小西桜子も素晴らしく良かったですが、
今作は、この主演女優、石川瑠華さんだから成立していると言ってよい、完璧なキャスティングでした。石川瑠華以外ではあり得なかった。
私から見て最も苦手なタイプの、いやな感じの女性を演じているわけですが、(笑)
顔の感じや表情が、もうリアル過ぎちゃって。「いるいる、上京して来たこういう子」って感じがものすごい。濡れ場の”体当たり演技”も魂こもっていました。
共感とかは全くない、恋愛対象としては”絶対に付き合いたくない”キャラクターですが、忘れられない存在感です。

個人的感想。

ぜひ、「花束みたいな恋をした」と「街の上で」とセットで見てもらいたい、都会の青春、若者の恋愛と労働を切り取った素晴らしい作品でした。
猿楽町はストーリーには関係なく、街はどこでも良くて都会に埋もれる若者の話でした。ストーリーはあるようでないですが、男性側主人公、小山田修司(金子大地)には成長とこれから目指すべき道が提示されていて、女性側主人公、田中ユカ(石川瑠華)にはそれがないために流されまくる、という青春の残酷さが描かれていて、観ていてその痛さに辛くなります。

人生の残り時間がたっぷりあるだけに、惰性で過ごしてしまうから青春は残酷だし、思い返すと、若いっていいことばかりじゃないよね。
私自身も、今の方がよっぽど生きやすいもん。
何を目指していいかわからないうちは苦しいし、すでに道が決まってまっしぐらの人には、とても敵わないし。。
人生、どうすりゃいいの、っていう若い頃の悩みは、こっちも経験したから良くわかります。
ただ、もうちょっと、作中の登場人物たちより、自分はまともだったかな。
こいつら、だめなヤツ過ぎじゃない。(笑)

“搾取される都会の若者”の現実も描かれているから、そこも痛い。誰しも痛みを伴いながら大人になっていくものだけど、それって運や人の出会いも大きく関わってくるところで。
頑張ってもしょうがないところで頑張っているだけだから、これじゃ報われないよ。。

大人になりきれないままモラトリアムを続ける若者の、社会の養分になる様は観ていられない。救ってあげたくなるくらいだ。

「街の上で」は、テイストはもうちょっとほのぼのとしていて。モラトリアムでも良いでしょ、という面が描かれていたと思うけど、「猿楽町」は、もっとその痛みの部分に焦点を当てているというか。辛いわ。。
恋愛映画でもありますが、ここは、「花束みたいな恋をした」と対になるところで。

この恋愛はどうすれば、上手くいったのでしょう?
なぜ恋愛になった途端、嫉妬や束縛といった概念が発生するのでしょう?
2人の距離感を保つには、どういう方法があるのでしょう?

誰もが悩み苦しむような(私などは今もです笑)恋愛でしか突きつけられない問いが、終始頭をもたげてきます。

人間は弱いものだからさ。
辻褄が合わないときや、ウソをつくときもある。でも恋愛は相手あってのものだから、相手の気持ちを考えると、全肯定も出来ないんだよね。。

と言うような名前のない感情を、映像で表現出来ているから、この作品は面白いし痛いです。
若干、田中ユカがステレオタイプ過ぎて、そのテイストが苦手な方には合わないだろうな、とも思いますけれど。
めちゃくちゃ、いい映画でした。

私がもし、主題歌を選ぶのならば、
THE BLUE HEARTS「TOO MUCH PAIN」

とにかく痛いよ。
だからこそ、映画として、映画館で閉じ込められて観る価値がある作品です。
私は、青春3部作完結編として、観られて良かったです。

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