得体の知れない「他者」について。映画 偶然と想像
皆様こんにちは。
ROBROY designing outdoors
秋元悠佑です。
ここへ来て、評価が急上昇中。
2022年、世界の映画界の中心となるかもしれない、濱口竜介監督の日本劇場公開における最新作、映画「偶然と想像」を甲府シアターセントラルBe館にて鑑賞して来ました。これ、噂通りの、とんでもない大傑作でした!
めっちゃくちゃ、面白かった!!
※オムニバスの短編3作が収録された、「会話劇ムービー」
○ もし昨年観てたら、年間ベストだったかも。。
公開自体は2021年12月からやっていたので、もし2021年内に観ていたら、年末ランキングには当然食い込んで、相当に迷ったと思います。
そのくらいの、超絶大傑作でした!
まず、監督・脚本を務めた濱口竜介が「ドライブ・マイ・カー」で、今、世界の批評家界隈で大絶賛の嵐です。この勢いで、日本人初アカデミー作品賞あるんじゃないか、という勢いになっています。
その大きな波が来ているなかでの、今作「偶然と想像」ですよ。
日本公開順だと逆転していますが、この「偶然と想像」は、すでにベルリン国際映画祭の銀熊賞受賞だそうです。
評論家筋がとにかく褒めてる、という作品になっていますが、私のような一般の観客が観たとしても、超絶面白い作品でしたよ。
○ 脚本力が凄まじくて、ビビる!
舞台のような会話劇構成の映画でして、つまりこの映画は、ひたすら登場人物たちが「会話」と「対話」を積み重ねていきます。言ってしまえば、ただ、喋っているだけの内容です。
じゃあ、どこが?なんでこんなに面白いのか?
それは、つまり、「脚本が、セリフが、凄まじいから」に尽きるでしょう。
こんな話、どうやって思いつくの?と誰もが思うし、脚本家、濱口竜介の才能に恐れ入ります。
登場人物たちの会話を聞いているだけで、
この先の着地はどうなるの?、このセリフ回しは、何を意味するの?
といった感じで、引き込まれる内容になっているし、興味の持続が尽きません。
私が一生懸命言葉にすると、
「現実に誰にでも起こりうる、だけどフィクションじゃないとありえない話」の絶妙なバランスが上手すぎて。。
とにかく、その脚本力の凄まじさをしかと体感するべきであります。
大人には、超絶おすすめ。
○ 舞台のようでいて、極めて「映画的」な作り。
アクションなどもなく、少ない登場人物が会話を重ねていくだけですから、最初「これ、舞台でも良いんじゃね?」と感じたわけですが、観ていくほどに、いやいや実に「映画的」な作品なのだなと感じました。
まず、撮影における「ローケーション」を上手く使っています。
外界から閉じられた部屋や車中でのシーンと、そこから出たオープンな空間になった瞬間の、2人の関係性の変化。
場所が変わる事で、会話の内容や、関係性の変化していく様をとても上手く捉えています。
「ドライブ・マイ・カー」でも見せた、濱口監督のシグネチャーでもある車内の会話のシーンは特に素晴らしくて、「映画というアートフォームである意味」を感じさせてくれました。
セリフの長さも映画ならでは。こんなに長いセリフ回しは、流石にライブショーの舞台ではなかなか難しいのではないかと思いますし。
突然カメラがパンと寄って、映像である事を観客に意識させるカットがあったりして、濱口監督も映像表現である事に意識的な作りをしています。
表現の方法として映像であることの必要性を感じさせてくれて、観客に「映画を観るとは、つまり人生においてどういうことか?」という問まで投げかけてくるような作りです。
これって、ウェルメイド過ぎる!上質過ぎる!凄すぎるわ。。
○ 得体の知れない「他者」と生きている。
短編が3作品収められていますが、テーマとして、そのどれもで感じたのは、「他者性」について。
もっと言うと、社会を生きるという事は、つまり「得体の知れない他者と生きる」という事を強く感じました。
目の前の人間が持ち合わせている、”わけわからなさ”、のようなものが描かれていて、人間の持つ感情の複雑さが描かれています。
それは、時に非常に面倒。
我々は、男女だったり世代だったりと、カテゴリーに分けられがちだけれども、それだけに収まらない難解な人間模様が、この社会にはバリエーション無限に存在していて。
結局、自分以外の周りの全てが、得体が知れないわけよ。
それでも、目の前の相手を理解をしたいと思うし、他者とコミュニケーションしたいという欲望を持つことが、これもまた人間の性なのかしら。
と、そんな事を感じました。
キャスト陣では、登場人物皆素晴らしいですが、個人的な好みで言えば、
古川琴音さんと森郁月さんにはがっつり持って行かれましたね。大好き。(笑)
3篇ある中で、どれもが素晴らしいですけれど、私個人に共感して最も響いたパートは、パート1の【魔法(よりもっと不確か)】。
それ以外の事ではスマートに物事を運ぶのに、恋愛においてだけはヤバい女性に取り憑かれてしまうという、中島歩さんの役には、大いに感情移入しました。(笑)
アートワークも素晴らしくて。ポスターのデザインセンスがグッド。音楽はシューマンのピアノが印象的に使われていています。インテリ感たっぷり。さすが、東大、東京芸大大学院卒の濱口監督作品だなぁ。
上映時間、121分はあっという間でありました。いやー、上質の映画を観たって感じ。
大満足で劇場を後にしました。
作品の冒頭、脚本、監督の濱口竜介さんご本人が登場して、見どころを語ってくれています。
ああ、これが「世界の濱口竜介なんだ」とその人を認識出来る点も良かったです。
黒澤明の時代は知らないが、濱口竜介の時代を生きているのかも知れない。
さて、もはやショーレースとしての役割を終えたとの評価もあるアカデミー賞ですが、
濱口監督作「ドライブ・マイ・カー」はどうなるのでしょうか?
今まさに劇場でリバイバル上映やっていますよ。発表は3/28だそうです。
濱口竜介脚本・監督、「偶然と想像」は、大傑作でした。
ありがとうございました。
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