男に生まれた不幸 映画 SNS-少女たちの10日間-
2021.05.20

男に生まれた不幸 映画 SNS-少女たちの10日間-

皆様こんにちは。
ROBROY designing outdoors
秋元悠佑です。

現在劇場公開中、映画「SNS-少女たちの10日間-」をTOHOシネマズ甲府にて鑑賞して来ました。

鑑賞後、劇場には重い空気が漂ってたなあ。。

童顔の大人の女性が12歳のフリをして、SNSで連絡してくるオオカミたち(10日間で2458人!)と対峙するリアリティドキュメンタリー。

良かった点

○ 社会的意義のある作品
この時代、子供にスマホをどう与えれば良いのかは、親は皆悩んでいる。実際ヤバいこともあるんだろうなと思っていますが、何がどう、どこまでヤバいのかは想像の範疇でしかなくて。今回の映画は、作品としてそれを可視化しているところに、非常に社会的意義があると思いました。放っておいたら、どうヤバくなるかが観ているとわかる。
こんなヤバい奴らに接触されるかと思うと、特に女の子の親は、大変だろうな。。
ネットリテラシーとか、性教育とか、僕らは逃げずに真面目に向き合う時期に来ています。

○ セットや舞台設定
この映画のために、子供部屋がセットで制作されて撮影されています。専門家の意見が入ったセットの作り込みは見事。SNSでオオカミとやり取りする時のルールも、細かく設定されています。

1.自分からは連絡しない
2.12歳であることをハッキリ告げる
3.誘惑や挑発はしない
4.露骨な性的指示は断る
5.何度も頼まれた時のみ裸の写真を送る(※合成写真)
6.こちらから会う約束を持ちかけない
7. 撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する

舞台設定はしっかり作って、一応の準備を整えて、撮影に入っています。
でも、実際は、その想像を超える事態になっていくんだけど。。

○ 主演女優の輝き
オーディションで選ばれた今作の主演女優さんたち。皮肉にも全員童顔美人で、本当に12歳に見えてきます。美人すぎてちゃんと魅力があり、私も男としてその魅力に惹かれるのがわかるから、自分がいやになります。
オオカミのクズと一緒にするなと思うのだけど、確かに異性としての魅力は感じてしまう。
ああ、自分も男なのだ、という懺悔の念に駆られます。
そのくらい、女優さんたちの体当たり演技は見事でした。
ただ、彼女たちのメンタルのケアはちゃんと出来ているのかな?
局部の画像を見せられまくって、二言目には「脱げ」と言われて。。
トラウマにならなければ良いけど。
彼女たちの幸せを切に祈ります。

○ チェコ映画である
テーマがテーマなので、男性観客でも不快感満載の今作ですが、チェコ映画であるのが、まだ観れるポイントなのかなと思いました。我々日本人からは、言語も顔立ちもかけ離れているので、違う惑星の話のように捉えられるから。
これ、リアリティーショーとしてどこの国でもリメイク出来る内容ですけど、日本版が出来たとして、日本人観客はとても観ていられない気がします。気持ち悪すぎるわ。

テーマ的に意義があり、今の時代に作られるべき作品ではあると思います。賛否分かれると思いますが、何なら、学校教育の場で見せても良いと思うくらいです。
とにかく、出てくるおっさんにはゲンナリするし、救いようがないなと思ってしまいますが、彼らも同じ社会を生きる人間であることに、こちらも深く考えさせられます。
彼らは、どうも性欲というより、支配欲に寄っているように見えて。

ストーリー構成は、最初SNSでのやりとりから、オオカミたちと実際にカフェで待ち合わせて、という流れになります。オオカミたちの人目があるところでの小心者ぷりったら。
でもこういう人達にも、立場があり、家族があり、しかしSNS上では、高圧的ゲスっぷりを発揮する。
うーん、問題は根深い。。

社会的意義はあり、制作陣の取り組みは素晴らしいと思うのですが、この映画、絶賛一辺倒とはならないし、私もそうは思いません。ところどころ首をかしげる点もあります。

例えば、オオカミどもにアイコラの写真を送るくだりや、SNS上にも、まともなやつもいるんだよのくだり。倫理的にどうなの?これで合ってるの?
アイコラだろうが、顔出しの裸の写真がネット上に出ちゃっても良いの?本当にまともな大人なら、SNSで12歳の子とチャットなんかする?

といった感じで、ツッコミどころも多々感じました。
そして問題の解決作が提示されるわけではないので、ただただ後味の悪さだけが残ります。
ノンフィクションとしては良いと思いますが、観客からお金を取る劇場用映画としては、もう一捻りの仕掛けが欲しかったところであります。

今作の”ラスボス”は、職業が「子供キャンプの運営」ということで、私と極めて近い職業のおっさんでした。こいつ、ゲスの極みでしたが、私も一歩道を間違えればこうなるのかと、個人的立場からギョっとしたのでした。
人様の子供と接する自分の立場を考えても、印象に残る映画となりました。これは、自宅でストリーミングではとても観ていられない。途中でやめてしまうと思います。
閉じ込められた劇場で、不快な音響と共に味わう映画だと思いました。

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