人間を人間たらしめるもの。映画 HOKUSAI
2021.06.09

人間を人間たらしめるもの。映画 HOKUSAI

皆様こんにちは。
ROBROY designing outdoors
秋元悠佑です。

映画 「HOKUSAI」(橋本一 監督)をTOHOシネマズ甲府で鑑賞して来ました。

葛飾北斎の一生と、激動の時代における文化のあり方を描いた物語。

傑作でした!

良かった点。

○ 天才 葛飾北斎
恥ずかしながら、名前と「富嶽三十六景」しか知りませんでしたが、鑑賞後に調べたくなるくらいに、北斎に興味を持てます。浮世絵師だと思っていましたが、画は何でも書くこと、など知らないことばかりでした。90歳まで生きているんですね。富嶽は、晩年の70歳頃の作品。改めて観ると、素人にもわかる。確かに凄い画です。
勉強になりました。教養は、映画を観る醍醐味の一つ。

○ 撮影技術
この映画、画面が明るく画がきれいなんです。カメラが良いのか?撮影技術が良いのか?夜のシーンとかも、はっきり識別出来ます。絶対にスクリーンで観るべき作品。素人にはわかりませんが、4kカメラ的な技術革新があるのかなあ?

○ 脚本
ストーリーが面白いです。一般の平民身分出身のため、北斎の生い立ちはわかっていないことも多いそうで。脚本家の河原れんさんも創作にあたって、「苦しみながらも、自分の画を極めていく」ストーリーを意識したそうです。偏屈な天才が、大成してジャンルを背負うまでになっていく。世間と勝負して、ロッキーになるという成り上がりストーリーは、いつの時代がテーマでも「俺たちの映画」となりえます。
特に、お上と戦っていく話。ノレた。

○ セットと美術
吉原のシーンのセットの豪華さは見事。ただでさえお金がかかると言われる時代劇もので、あれだけのセットを組むとは。かつらとか、着物とか、これからも技術として残していくのは、本当に大変な事なんだろうと想像します。

○ 世界戦略?
「世界の北斎」を意識してか、タイトルを「HOKUSAI」としたのが良かったです。失敗しがちな、タイアップの日本人アーティストの主題歌も、今作には無かったのが良かったです。

個人的感想。

予想外に、個人的には大満足しました。この映画、良く作ってあります。
もちろん北斎が主人公なのだけど、実際には北斎を取り巻く「蔦屋 重三郎」(阿部寛)「柳亭 種彦」(永山瑛太)が主人公の作りでもあり、背景の江戸の出版文化なども、良く知ることが出来ます。

アーティストが画を書くだけでは、「商売」にならないのは現代と同じで、「出版」のシステムも江戸ではしっかりと機能しています。観ていると、時代は違えど、現代設定でも全く違和感ないような話なのです。
社会の本質は、当時とそんなに変わらないですかね。

特に響いた点は、設定が図らずもコロナ禍の現代とリンクするところ。
お上(幕府と政府)には、文化はわからず弾圧されるわけですが。。
これは、休業要請下の現代日本の映画館とまさに同じ。

政治には、システムは理解出来ても、「価値」はわからない。

しかし、それでも庶民は負けず、創作、文化にこそ生きる意味を見出します。
資本主義の理屈や、管理の効率だけを考えて支配しようとする政治に対して、
庶民が太刀打ち出来るもの、それが文化活動だし、「人が人として生きる意義」を改めて考えさせてくれます。

”我々は、文化的ないきものなのだ。”

コロナ前に制作したと思うのですが、作り手達の魂がこもっているのが良くわかるし、映画公式HPにある「気持ちを込めて公開中」の一文にも、それは良く表れています。
そういうものにはノレますし、応援したくなりますよ。

私は自分の職業として、パドルスポーツという不要不急の、言わば楽しみの為だけにある、遊びを提供する仕事をしています。ゲストを通じて世の中を楽しませるだけが仕事です。不要不急という点で、アーティストと同じだと思っているし、「不要不急だからこそ、人間をより人間らしくする体験」を追求していきたいと思ってやっています。それは、お互いに笑顔の時間を作るということだと思っているけれど。

結局、我々は機械じゃない。遊びがなければ、楽しみがなければ人は生きられない。
この映画は、時代に左右されない普遍の法則に気づかせてくれる、それでいてエンターテイメントとしても面白い、傑作だと思いました。

普段、当たり前すぎて価値を忘れがちですが、(笑)
富士山地元住民として、富嶽三十六景を観てみたくなるという点においても、観られて良かったです。

【ROBROY designing outdoors】は 

西湖専門 パドルスポーツガイドサービスです。

皆様のご連絡を、心よりお待ち致しております。